【調査速報】210221八甲田モッコ沢・雪崩事故
●事故概略●
日 付: 2021年2月21日
時 刻: 13時頃
場 所: モッコ沢(地形図)
概 略: 山スノーボードをしていたグループ(4名)の内2名が雪崩を誘発し巻き込まれた。1名は自力脱出したが、女性1名(40)が完全埋没。埋没者は、スキーパトロールのプロービングによって発見されたが死亡した。

図1 地形図(赤丸=埋没位置)
●雪崩データ●
種 類: 面発生乾雪表層雪崩(持続型スラブ)
規 模: サイズ2 (流下距離約380 m)
標 高: 1,165m(上部破断面)
方 位: 北
破断面: 幅 50 m、厚さ90- 130 cm(平均100cm)
傾 斜: 35°(最大44°)
弱 層: こしもざらめ雪
滑り面: 融解凍結クラスト
※破断面データ(SPIN参照)略 ソースにアクセス
●行動● 写真1と2は省略。ソースにアクセス
スノーボーダー4人は、八甲田ロープウェースキー場のダイレクトコースを2回、滑走。その後、ロープウェー山頂駅から山岳区域であるモッコ沢方向へ入った。視界20m程度のガスの中、先行の2人は急斜面を避けるようにスキーヤーズ・レフト方向へ進んだが、後続の2人とうまくコミュニケーションが取れていなかったため、後続2人は直進。結果、標高1,160m付近で雪崩を誘発し、流された。グループは、当初、コース内だけでの滑走予定であったため、雪崩ビーコンは車内においてあり、装着していなかった。

写真3 雪崩道全景(赤点丸=埋没位置)
●捜索救助●
流された2人の内、1人が部分埋没で自力脱出、1人が行方不明。通報を受けたスキーパトロールが14時頃、現着。自力脱出者の下方40mに立木があったこと、また、不明者は自力脱出者の前方を滑走していたことなどから、その立木付近をパトロールがスポットプロービングをしたところ、約10分で埋没者を1.5mの深さで発見。その後、スキーパトロール及び八甲田ロープウェー職員らによって、要救助者は搬出された。
●補記●
1.山岳事故
この事故は山岳区域での事故であり、スキー場の事故ではありません。八甲田は長き山スキーの歴史を持つ良きフィールドです。今回の場所は、昔から滑走されてきた山岳区域となります。
2.判断の難しい積雪コンディション
雪崩は、硬い旧雪下にある結合力の弱い雪が壊れて発生していました。当日に降った新雪が雪崩れたわけではありません。雪崩プロフェッショナルであっても、状況判断が難しい積雪コンディションでした。
●謝辞●
現地調査にあたり、八甲田ロープウェー株式会社及び八甲田スキーパトロール隊のご助力を頂きました。厚く御礼申し上げます。
・・・他山の石として転載しました。
現場は沢でした。
雪崩は尾根でも起こるとはいえ、沢の方が確率的には高いと考えるのが常識。
先日、偶々、北アルプスの村尾根で1月中旬に起きた3人の早大山岳部OBの雪崩による遭難の記録を見ました。彼らも村尾根と遠見尾根の間のA沢と支沢との出合いで遭遇しています。5月GWの捜索で何人もが一度は捜索したが見つからなかったので、さらに深い雪の下に埋もれていた。しかも彼らはその前の4月に一度成功しているんです。多分パウダー滑降狙いだったと思います。
今回の事故も判断が難しかったと書いてありますが、13時頃というのは雪山の沢では今から雪崩れるぞ、と待ち構えているところへ飛び込んだようなものです。
雪崩の危険回避のためには午前中の早い時間帯に滑降するのが一番です。日の出は午前6時10分ごろ、八甲田のロープウェイは始発は9時なので、到着後スノボを装着すれば、10時には出発できたと思います。雪山は夜明け前が一番寒く(日没から時間が経過しているので)、夜明けと同時に気温がぐんぐん上昇し、低温でブロックされていた表層が緩み始める。ゲレンデ外を滑降する人はそれくらいの計算は最低でもして欲しい。
北アルプスの山岳滑降を無難に楽しんでいる山スキーヤーは、午前中のそれも未明に行動している。逆に海外遠征などの登山技術を積んできたようなアルピニストでも雪崩や落石で死亡している。時間帯は11時過ぎが多い。
ゴンドラやスキーリフトを利用すると出発は大体8時から9時になる。10分後にトップについて準備すると10時くらいになるからスピーディーに行動しないと危険である。
※2018年には八甲田ルールが定められた。捜索救助費は無償ではないことに留意したい。組織された山スキーヤーは山岳共済などに加入されていると思うが、登山ではなく、ゲレンデオフのスノボらは無保険かと思われる。代償は高くつく。
八甲田ローカルルールについて
- 関連記事
-
- 【調査速報】210314乗鞍岳位ヶ原・雪崩事故 (2021/03/20)
- 長野県中央アルプスで雪崩 愛知・日進市の男性も巻き込まれ、軽いけが (2021/03/14)
- 北ア乗鞍岳で雪崩 1人心肺停止、滋賀県の2人負傷 通報のスキーヤー「振り向いたら、全員埋まっていた」 (2021/03/14)
- 北大の山岳グループが一時雪崩に巻き込まれる (2021/02/28)
- 雪崩相次ぐ 赤井川村でバックカントリースキーの女性死亡 上川岳の大学生2人は無事救助 (2021/02/28)
- 【調査速報】210221八甲田モッコ沢・雪崩事故 (2021/02/26)
- 八甲田 スノーボーダー2人が誘発「表層雪崩」 結合力が弱い雪の層が崩れ流れ落ちる(青森県) (2021/02/26)
- 雪崩に巻き込まれ男性死亡 コース外でスノボ滑走中 (2021/01/27)
- “秘境の滝”へ 落石 女性(24)が負傷(秋田県) 9/24(木) 19:27配信 (2020/09/24)
- 独自入手 ピンネシリ岳雪崩事故 緊迫の救助映像【HTBニュース】 (2020/03/20)
≪ 雪崩相次ぐ 赤井川村でバックカントリースキーの女性死亡 上川岳の大学生2人は無事救助 | HOME | 八甲田 スノーボーダー2人が誘発「表層雪崩」 結合力が弱い雪の層が崩れ流れ落ちる(青森県) ≫
≪ 雪崩相次ぐ 赤井川村でバックカントリースキーの女性死亡 上川岳の大学生2人は無事救助 | HOME | 八甲田 スノーボーダー2人が誘発「表層雪崩」 結合力が弱い雪の層が崩れ流れ落ちる(青森県) ≫
Author:東海白樺山岳会
1962(昭和37)年に名古屋市交通局の有志数名が設立。その後一般社会人の親睦の登山クラブとして継承されてきた。40歳代から80歳代の男女約24名(2016年11月現在)が年間を通じて計画的に実践。
三河、美濃、鈴鹿の日帰り登山、岩登り、沢登り、山スキー、冬山以外にも夏山縦走も楽しむ。皆で誘い合い日本百名山、日本三百名山を目指す会員もいる。個人の志向でぎふ百山、信州百名山、富山百山、一等三角点のピークハントを目標にする会員もいる。
例会は第1水曜日(都合で火曜日になることがある)に名古屋市中区生涯教育センターで夜7時から8時30分まで。会合は山行への参加を募る重要な場なのでなるだけ出席を。欠席者にはメール、郵便、ファクスで伝達。会報も年間4回発行。総会(事業報告、役員改選、会計報告、規約改正など)は4月に実施。
イベントは1月の新年会(町)新入会員の入会に応じて新人歓迎会(山で)、年末は忘年山行(1泊2日)、登山、岩登りの初心者の指導練習も適宜練達者のリードで実施。
会費年間3000円。入会金2000円。別途山岳共済保険加入のための岳連会費と保険料要。現在会員募集中。問合先090-4857-9130西山まで。メールフォームからもどうぞ。
- 飛越国境「人形山のつもりが三ヶ辻山!」 (04/20)
- 下山届 雨乞岳 (04/20)
- 山行報告白瀬峠 (04/19)
- 山岳会所属の男女4人が山で遭難 うち71歳の女性が死亡…低体温症か 奈良・川上村(上多古川で沢登り) (04/19)
- 登山の男性が滑落し骨折、同行2人も巻き込まれヘリ搬送 神戸・菊水山 (04/19)
- 笠置山無事下山 (04/19)
- 下山届 水沢岳 入道ヶ岳 (04/15)
- BCではリスクの再確認・ルールとマナーの厳守・十分な装備の携行を 島崎三歩の「山岳通信」第219号 (04/15)
- 日本山岳遺産基金 × ヴィブラムジャパン 登山道整備プロジェクトへ助成団体を募集 (04/15)
- 南アルプス・大無間山 川根本町の遭難事故 兵庫の男性捜索打ち切り (04/13)
- カレンダーに山の名書き残し…不明の男性捜索 自力で下山 大分・佐伯市 (04/13)
- 山行報告 日永岳(1215.6m) (04/12)
- 仏庫裡を歩く (04/12)
- 猿投山 (04/12)
- 北アルプス涸沢岳で心肺停止の男性が発見されその後死亡確認 行方不明の茅野市の男性か (04/10)
- 体力作りのため登山中の消防隊員から「動けなくなった」と通報…防災ヘリが下山道で発見し救助 足首を骨折 (04/10)
- 春は最も危険 登山ブーム「春山登山の危険性と楽しみ方」 (04/09)
- 下山届 イブネ クラシ チョウシ (04/08)
- 「登山用GPS端末」で消防に場所伝える 滑落した男性救助【佐賀県】 (04/08)
- 山岳遭難か 55歳男性不明 登山口近くに車 静岡 (04/05)
- 下山届 奥三河・岩岳 (04/05)
- 萩太郎山(1358.6m)・茶臼山(1415.8m)・天狗棚(1240m・)井山(1195m)下山届 (04/04)
- 願教寺山 無事下山 (04/04)
- 東濃・大根山のシデコブシ群生地を見に行く (04/03)
- 尾籠岩山・三ツ瀬明神山山行 (04/01)
- 下山届 竜ヶ岳 (04/01)
- 六所山を歩く (03/31)
- 鳥取・氷ノ山で少年2人が一時遭難 スマホ位置情報を基に約2時間後に救助される 雪で登山道見失ったか (03/30)
- 『道に迷った』 北ア・八方尾根で男性2人遭難 一夜明け、ヘリで救助 当時は「ホワイトアウト」状態 (03/27)
- 下山届 御在所 (03/25)